能舞台の舞台板
通常、一般建築の縁甲板などは木表が上になるように加工します。しかし、能舞台に用いられる板は木表ではなく、木裏が上になるように加工します。板目挽きされた舞台板は木裏側がふくらむため、舞台全体が盛り上がります。すると、役者が足を踏み鳴した時、音響効果が非常に良くなるのです。また、木裏が上だと木目が立つため、スベリにくくなることも挙げられます。当社が納材した東京の国立能楽堂の舞台板は木曽檜(尾州檜)の赤身四方無節で長さ6000m/m、幅450m/m、厚み45m/m。かなりの大径材が必要でした。
吉野檜と木曽檜
吉野檜は木曽檜に比べて粘りがあるため、柱などの構造材に適しているとされる。
また、木曽檜は吉野檜よりも年輪幅が細く、やわらかく、加工しやすいため造作材、建具材に適しているとされる。曹洞宗の大本山永平寺に新築された接賓に於いて、柱は吉野檜、造作材、タルキなどは木曽檜が用いられました。
木曽檜と尾州檜
江戸時代、尾州藩は木曽地方を藩領として木曽五木(ヒノキ、サワラ、ヒバ、マキ、ネズコ)を留木制度のもと管理していた。なかでも木曽から産出される檜は尾州檜と言われるようになった。木曽檜イコール尾州檜のことであるが、名古屋市内の木材業者に言わせると両者の違いは次の通だ。名古屋市内を流れる堀川沿いには昔から数多くの木材業者があった。木曽から伐り出された檜は堀川に浸けられていた。そして、彼らは水中で十分養生した後、製材するのであった。彼ら曰く、本当の尾州檜は名古屋の堀川で十分養生された木曽産出の檜のことを指す。